Keysight 電流プローブ事例紹介

 海外の電子機器メーカー(設計・開発部門)
  スマホの待機時消費電力が測れない
  電流プローブで思わぬつまずき

 スマホ市場での巻き返しを狙い、慎重に開発を進めた新型機。特徴は長い電池駆動時間である。
  しかし、それの実証に不可欠な待機時の消費電力が測れない。何が問題なのか。その解決方法は?

 

【3】解決:「ボスに合わせる顔がないなぁ」  

事例紹介:
海外の電子機器メーカー(設計・開発部門)
スマホの待機時消費電力が測れない
電流プローブで思わぬつまずき


【1】背景

【2】問題:「ノイジー」な波形しか現れない、、

【3】解決:「ボスに合わせる顔がないなぁ」

【4】この問題を解決したソリューション


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   翌日、O氏は重たい足を引きずるようにオフィスへと向かった。「ボスのSさんに、合わせる顔がないなぁ。何て、報告しよう・・・」。それが一番の気がかりだった。

 デザイン部門の責任者であるS氏は、社内で「ミスター・スマホ」と呼ばれる男である。苦しい事業環境下でも、常に先頭に立ち、部下を叱咤激励し、デザイン部門を引っ張ってきた。今回の重要プロジェクトはS氏の肝いりだ。O氏は、S氏に育ててもらったと言って過言ではない。それだけに、このプロジェクトは何が何でも成功させたい。思いは募るが、成果が伴わない。つらい出勤だった。

 デスクに座ったO氏。それから、程なくしてS氏も出勤してきた。「あれこれ考えたところで、どうなるものでもあるまい」。O氏は、思い切ってS氏のデスクに向かい、昨夜に陥ったトラブルをこと細かく説明した。

 ところが、S氏からは思わぬ反応が返ってきた。「やっぱりそうなったか。待機時の消費電流は
きっと測定できないと思っていたんだよ」。S氏は、少し嬉しそうにO氏に語りかけてきた。O氏には、何が何だか分からない。S氏の顔に表れた微笑みを自分への嘲笑と勘違いし、S氏に対して語気を強めて「どういうことですか」と聞いた。



クランプ型では最小分解能が足りない

 
「悪い悪い。君のことを笑ったんじゃないよ。測れなかったことが嬉しかったんだ」とS氏。「えっ、測れないことが嬉しいって・・・、どういうことですか」。O氏はさらに食って掛かった。S氏は、ファイルから書類を出しながら、「ごめん、ごめん。ちゃんと説明するから、落ち着いて話を聞いてよ」と言った。

 実は、クランプ型の電流プローブには、最小分解能に限界が存在する。つまり、小さすぎる電流は測れない。電流を磁気に、その磁気を電流に変換する際に損失が発生してしまうからだ。この結果、測定した波形はノイズに埋もれてしまう。具体的な最小分解能は、メーカーによって異なるものの、5mAや1mA程度である。

 今回の重要プロジェクトでは、待機時消費電力の大幅削減を目指して、ハードウエアもソフトウエアも全面的な見直しをかけた。S氏の見積もりでは、待機時の消費電流は数百μAになるはずだった。つまり、クランプ型の電流プローブでは、そもそも測れるはずがなかったのだ。さらに、O氏が次に取りかかる予定だった典型的な使用状態での消費電力を測定することも無理だった。クランプ型の電流プローブでは、最大値が約2A、最小値が1mA以下という、極めて広いダイナミック・レンジには対応できないからだ。電流プローブに使われているアンプ回路が、大きな電流を測定する場合に飽和してしまうからだ。

 S氏の丁寧な説明を聞いたO氏は、すぐに状況を理解することができた。「でも、知っているなら、なぜ早く教えてくれなかったのですか」。O氏は、率直に問いかけてみた。するとS氏は、「いや正直、自信がなかったんだ。設計の段階では確かに、待機時の消費電流が数百μAになるはずなのだが、実際にそこまで低減できているかどうか・・・。そこでまず、仕事が丁寧な君に任せてみたんだ。まぁ、許してくれよ。君が測れなかったということは、待機時の消費電流は1mA未満であることは間違いない。だから、嬉しかったんだ」。



シャント抵抗を使う新型電流プローブが救世主に

 「なるほど。そういうことだったのか。どおりで、昨晩あれだけ苦しんで試行錯誤しても測れなかったはずだ。でも、待てよ。じゃぁ、どうやって測定すればいいんだ・・・」。O氏は心の中で、こうつぶやいた。そのとき、ふと新たな疑問が芽生えた。それを見越したようにS氏が再び口を開いた。

 「こんなことになるかと思い、先月のトレードショーで、良いものを見つけておいた。これだよ」とS氏は言って、ファイルから取り出した書類(カタログ)をO氏に渡した。「これは何ですか?」。「それはね、新しいタイプの電流プローブだよ。キーサイト・テクノロジーの新製品。最小分解能がとっても小さいそうだ。これだったら測れるはずだ」。


 S氏は、O氏のデスクの前に立ちながら、すぐにカタログに目を通した。しかし、非常に小さい最小分解能を実現できる原理が今ひとつ理解できない。そこで、O氏に「どんな原理を使って測る電流プローブなのですか」と聞いた。S氏によると、この電流プローブは高精度のシャント抵抗を使うタイプだという(図3)。それに加えて、検出した信号を増幅する差動アンプに、ノイズ特性に優れた半導体チップを採用した。この結果、50μAと極めて小さな最小分解能を実現した。O氏が現在使用しているクランプ型電流プローブの最小分可能は1mA。従って、シャント抵抗を使う新型の電流プローブの最小分解能は20倍ということになる。

(図3) シャント抵抗を使った電流プローブ
キーサイト・テクノロジーの新型電流プローブ「N2820A/N2821A」の内部構造である。



 「とても優れた電流プローブだ」。O氏は、すぐに理解できた。すぐに頭の中で、試作品の評価にどうやって適用するのかシミュレーションをしてみた。すると1つの問題点が浮かんだ。それをS氏にぶつける。「とても優れた電流プローブですね。確かにこれを使えば、新しいスマホの待機時消費電流が測れそうです。しかし、試作品のボードにシャント抵抗を実装するスペースはありませんよ。いまさら、ボードを作り直していたら、ライバル企業に先を越されちゃいますよ。どうしましょうか」。この質問にS氏はすぐに反応した。「それについても、キーサイト・テクノロジーの担当者は大丈夫だと言っていたぞ。この前の展示会で、その担当者の連絡先を聞いておいたから、君からアポを取ってくれないか。スケジュールさえ合えば、一両日中に来てくれるだろう」。




その性能に2度驚く

 O氏は、自分のデスクに戻るや否や、キーサイト・テクノロジーのM氏に連絡をとった。幸い、明日の朝であれば時間が空いているとのこと。すぐに来てもらうことにした。

 翌朝、M氏は、新しい電流プローブを携えて、O氏が所属するデザイン部門にやってきた。M氏は早速、カバンから電流プローブを取り出し、O氏に見せながら、こう説明した。「これが当社の最新電流プローブ『N2820A/N2821A』です。測定可能な最大電流は5Aで、最小電流は50μA。ダイナミック・レンジは20000対1。かなり、すごいでしょう」。


 見た目は、普通の電流プローブ。何か大きな仕掛けがあるわけではなさそうだ。O氏は、最初の疑問をぶつけた。「どうして、最小分解能が50μAと小さいんですか」。M氏によるとポイントは2つあるという。1つは、使用しているシャント抵抗の精度が高いこと。もう1つは、電流プローブ本体に内蔵されている差動アンプICのノイズ性能が極めて高いことだという。次に、最大の疑問を投げかけてみた。「うちには今、高精度のシャント抵抗を置いてないし、測定対象のボードには、シャント抵抗を実装するスペースがないんだけど、大丈夫ですか」。すぐさま、M氏は「シャント抵抗は、電流プローブ本体に入っています。ですので、お客様が用意する必要はありませんし、ボードに実装しなくても大丈夫です。さらに『MBB(Make Before Break)』と呼ぶボード接続用治具も充実しているので、使い方も簡単ですよ」と説明した。

 M氏は、慣れた手つきで電流プローブを試作品のボードに取り付ける(図4)。そして、出力側のコネクタをオシロスコープに接続する。これでセットアップは完了だと言う。オシロスコープをのぞき込む。待機時の消費電流の波形がくっきり浮かび上がってきた。まったくノイジーではない。思わず「すごい」という感嘆の声を挙げてしまったほど綺麗な波形だった。マーカーを合わせて数字を確認してみる。待機時の消費電流は555μAと表示された。かなり低い数字だった。

(図4) 新型電流プローブの使い方
ボード接続に向けたアクセサリ(MBB)が充実しているため、簡単に取り付けることができる。


 M氏は、目を丸くするO氏に、「驚くのはまだこれからですよ」と声をかけて、次の測定に移った。次は、典型的な実使用状態における消費電流の測定である。一般に、実使用状態では、フル稼働時と待機時の間で短時間に行き来するため、フル稼働時の消費電流は綺麗に表示できても、待機時の消費電流の測定結果がノイズに埋もれてしまっていた。しかし、どうだろう。新しい電流プローブを使えば、フル稼働時も待機時も鮮やかに測定できていた(図5)。M氏は自慢げに「ほら、また驚いたでしょう」と胸を張った。

(図5) 測定波形
2系統の測定チャネルを備えているため、電流変化のダイナミック・レンジが
非常に大きい場合でも測定が可能だ。


 M氏よると、フル稼働時と待機時の消費電流の測定を可能にしたポイントは、2系統の出力を用意した点にあるという。1つの系統は、高利得の差動アンプICを搭載した「Zoom-in View」。フル稼働に近い状態の電流測定に使う。もう1つの系統は低利得の差動アンプICを載せた「Zoom-out View」。これは、待機時の近い状態の電流測定に用いる。シャント抵抗についても、用途に応じて、20mΩと100mΩのいずれかを選択できる。もちろん、1mΩ〜1MΩの範囲であれば、ユーザーが用意したシャント抵抗を利用することも可能だ。

 もう説明は十分だった。迷う理由はない。早速、ボスのS氏の了解をとり、購入手続きを行った。その後、新型の電流プローブが届いた。すぐに測定に取りかかる。待機時の消費電流は555μA。典型的な実使用状態における消費電流を測定し、電池駆動時間を求めたところ、競合他社品の約1.5倍も長いという結果が得られた。

 測定結果をS氏に報告した。S氏は、そのレポートを手にとり、満足そうに笑った。そして「さあ、これからスマホ市場で巻き返すぞ」と、広いデザイン部門の隅々まで聞こえるような声で雄叫びを挙げた。
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