
Keysight 電流プローブ事例紹介
海外の電子機器メーカー(設計・開発部門)
スマホの待機時消費電力が測れない
電流プローブで思わぬつまずき
スマホ市場での巻き返しを狙い、慎重に開発を進めた新型機。特徴は長い電池駆動時間である。
しかし、それの実証に不可欠な待機時の消費電力が測れない。何が問題なのか。その解決方法は?
【2】問題:「ノイジー」な波形しか現れない、、、 |
事例紹介:
この問題を解決した高感度電流プローブについて: |
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ここは、スマートフォンの開発に取り組む海外の電子機器メーカーA社のデザイン部門である。 現在、スマートフォンの世界市場における競争は激しさを増しており、A社は苦戦を強いられていた。こうした状況を一変させるべく、A社では重要プロジェクトが進行していた。 「ユーザー・インタフェースが洗練され、処理性能も高い。しかも、電池駆動時間がとても長い。伝統に培われた技術力を生かした渾身の自信作」。社内では新機種に対して、こうした高い評価が与えられていた。 設計と試作は、順調に進んだ。そして今日の午後に、待ちに待った最初の試作品がアジアの工場から届いたのだ。梱包を開けて取り出した。デザインは思ったよりいい。スイッチを入れてみる。使い勝手も良好だ。「俺にも触らせてくれ」。デザイン部門のエンジニアたちの期待は膨らむばかりだった。 クランプ型電流プローブで測定するものの・・・ その後、通信機能の評価が終わり、次に、消費電力の評価の順番が回ってきた(図1)。担当するのは、デザイン部門の若手エンジニアであるO氏だ。フル稼働時や待機時など、さまざまな状態における消費電力を測定し、典型的な使用状態における電池駆動時間を算出するのが、O氏に与えられた仕事だった。この評価で、電池駆動時間が非常に長いことを立証できれば、新しい機種は成功したも同然。O氏は、少し緊張気味に、作業に取りかかった。
O氏が採用した評価方法はこうだ。試作品の電源回路にジャンパー線を取り付ける。そしてオシロスコープに接続したクランプ型の電流プローブを使って、ジャンパー線に流れる電流を検出するという方法である。クランプ型の電流プローブとは、電流によって発生する磁界を検出することで、ジャンパー線に流れている電流を非接触で測定するものだ。 まずは、フル稼働状態の消費電流を測った。「ピーク時は約1.8Aも流れるのか。こりゃ、かなり高性能なスマホだな」。その後、O氏は、データ通信時やブラウザ起動時など、さまざまな状態の消費電流を測定する。作業は順調だった。そして、最も注目すべき待機時消費電力の測定に取りかかった。 オシロの画面にはノイジーな波形しか現れない ところが、どうもおかしい。オシロスコープの画面には、とても「ノイジー」な波形しか現れないのだ(図2)。「あれ。接続不良かな」。いぶかしげに、ジャンパー線の接続部を確認する。「特に、問題はないなぁ」。気を取り直して、もう一度、測ってみた。結果は同じだった。オシロスコープには、ノイジーな波形がただ表示されるだけだった。 ![]()
これでは、待機時の消費電力を測定できない。しかも、この後に行わなければならない、ある典型的な使用状態における電池駆動時間の算出もできそうにない。この電池駆動時間を算出するには、スマートフォンの実際に操作しながら、消費電流の波形を連続的に取得し、最後に波形を積分することで消費電力を求める必要があった。しかし、待機時の消費電流を測定できなくては、当たり前だが、電池駆動時間を求められなかった。 O氏は頭を抱えた。苦戦を強いられているスマートフォン事業。その中でかすかに見えてきた一筋の光明。それが、この新しい機種だった。「一刻も早く、十分に長い電池駆動時間を実証したい」。にもかかわらず、肝心の測定ができない。O氏には理由が分からなかった。時間はもう深夜。O氏のデスクだけ灯りがついていた。 |
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事例紹介:
【1】背景: この問題を解決した高感度電流プローブについて: |